商品の紹介
					加速化し、深刻化する人間らしさの消滅。思想的には、新たな「人間機械論」「自由意志否定論」が論点となり、社会思想においても「市場主義と自己責任論による新たなアナーキズム」と「快最大化の解を導出する社会工学」が重視される。本書はこうした状況や思想に対抗する「ヒューマニズムの倫理」を展開する。 ルソーは近代社会の「人間疎外」をはじめに理論的に解明し、その克服の道を示した思想家である。それは歴史的にも今日的にも大きな意義を持つ。ヒューマニズムと民主主義との一体性の観点から、いま新たに『エミール』を読み解く。
 
 
  著者:仲島陽一(ナカジマヨウイチ) 1959年東京都生まれ。早稲田大学卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得。 学習院大学・放送大学・早稲田大学等の講師を経て、現在、東洋大学・東京医科大学等講師。 著書『共感の思想史』(創風社、2006年)、『共感を考える』(同、2015年)『入門 政治学』(東信堂、2010年)『ルソーの理論―悪の原因と克服―』(北樹出版、2011年)『哲学史』(行人社、2018年)等。訳書『両性平等論』(ブーラン・ド・ラ・バール著、共訳、法政大学出版局、1997年)。
 
 
  目次
  第一部ルソーの『エミール』と民主的人間の形成
  第1章 『エミール』第一篇:幼年期   1.個人教育と公民教育/2.全面発達論/   3.体の自由について/4.支配欲の源/   5.貧乏人の教育/6.民主的人間の形成/   7.いわゆる公共教育論との関係/ 第2章 『エミール』第二編:少年期    1.自由と依存について/2.権力と権威の排除/    3.学芸と道徳性/4.賞罰と競争心の排除/    5.所有と契約の世界へ 第3章 第三篇:少年後期   1.市民社会への移行/2.労働による社会化/   3.市民社会的平等/4.労働の義務と尊厳/   5.教育における労働/6.職業の評価と選択/   7.理性の自立/8.補足的結語 第4章 思春期    1.はじめに/2.社会的情念について/    3.「自己愛」について/4.「憐れみ」の教育について/    5.歴史教育について/6.おわりに 第5章 哲学・宗教と教育    1.本章の課題/2.哲学の端緒と認識関心/    3.ルソーの哲学と民主主義/4.ルソーの宗教と民主主義/    5.ルソーの哲学教育論 第6章 思春期と趣味論    1.問題の所在と本章の観点/2.趣味の概念/    3.趣味の形態と陶冶/4.趣味論と民主的人間の形成 第7章 女性論と女子教育論    1.問題の所在と本章の視覚/2.「民主主義」と「男女平等」/    3.古典的批判の例/4.依存と自立/    5.性善説と女性問題/6.性差について/    7.小市民的家族の意味/8.家族共同体の意味/9.まとめ 第8章 留学論    1.本章の主題/2.留学の目的、あるいは外国を知ることの目的/    3.歴史的文脈/4.現実諸国の観察/    5.都市と田舎の社会認識/6.実存的出会いによる本性善の感得/    7.結びにかえて
  第二部ルソーの思想
  第1章 ルソーの弁証法    1.はじめに/2.「矛盾」をめぐって/3.主僕関係/    4.個別と普遍/5.「媒介」をめぐって/    6.発展・疎外・救済/7.小結 第2章 「憐れみ」と「良心」の倫理思想    1.「憐れみ」の導入とその意味/2.「良心」の導入/    3.憐れみと良心の関連 第3章 「強さ」と「弱さ」の倫理    1.問題の所在と概念規定/2.幸福の観点からの人間の強弱/    3.道徳の観点からの人間の「強弱」/4.源泉と独自性 第4章 エルヴェシウスの倫理とルソー    1.問題の所在/2.一元論と二元論/    3.社会形成の原理/4.自我の解放と自我からの解放/5.総括 第5章 「憐れみ」における芸術と実生活    1.ミーメーシスの観点から/2.カタルシスの観点から/    3.イリュージョンの観点から 第6章 ルソーの芸術思想におけるリアリズムとロマンティシズム    1.ルソーの芸術思想/2.ルソーにおける二つの傾向/    3.啓蒙主義美学からの照射/4.芸術批判からの照射/    5.幸福観からの照射/6.ルソー的リアリズムの性格/
  補章一 森村敏己著『名誉と快楽』 補章二 競争と倫理
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